第二章

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皮肉なほどに煌めく星空の下で、本田志保里の通夜は行われていた。 その本田家の庭の片隅で、高木由衣は泣きながらバージニアスリムに火をつける。 お飾り程度のハンドバッグを小脇に挟み、細見でパンツスタイルの喪服は、由衣が元々持つ大人びた雰囲気を更に際立たせる。 「おい、こんなときに煙草はないだろ」 そう声を掛けたのは、恋人の宮村智樹。 「この記事見たでしょ!? こんなの酷すぎるわ!」 由衣は携帯のタッチパネルをスイッと弾くと、咥え煙草で液晶画面を智樹に見せた。 『母親(三十才)が娘(五才)を毒殺か? 悲愴感を理由に司法解剖を拒否するも刑事訴訟法により強制執行』 智樹は由衣の口から煙草を毟り取って地面に捨てると、揉み消しながら言った。 「だからって、妹のお前がこんなに荒れてたら美和子さんが可哀想だろ」 「わかってるわよ……でもお姉ちゃんが、そんなことする筈ない……」 由衣は涙も拭かずに携帯を鞄に押し込んだ。 「なんで愛娘を毒殺しなきゃならないの? あの日からずっと体調崩して、一番悲しんでるのはお姉ちゃんなのよ!」 「とりあえず落ち着こう、な?」 智樹は由衣の手首を引っ張って、路肩に止めたセダンへと向かった。
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