第二章

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茂の後に続いて参列者の横をすり抜け、玄関へ入る。 すぐ正面にある階段に足を掛けるのと同時に、二階から美和子の叫びが響き渡った。 参列者もその声に驚きを隠しきれずに、ざわめき始める。 由衣達は茂の背中を押すように階段を駆け上がった。 二階は廊下を挟んで子供部屋と空き部屋の二部屋。そして突き当りには美和子を寝かせた寝室がある。 木の扉は少しだけ開いていて、蛍光灯の光が漏れていた。 「美和子! どうしたんだ!」茂が扉に駆け寄ると、 バタン!と激しく音を立て、扉は完全に閉まった。 「どうしたのよ! 早く開けてよ!」 由衣は智樹の背中越しに覗き込んでそう言った。 「ドアが、開かないんだ」 それを聞いて智樹がドアノブに力を込めた。 「なんだこれ……すげえ……硬い」 男二人で力を加えても、そのドアが動く気配は全くない。 「ねえ! 早く開けて!」 由衣はそう叫んで、なに? と心の中で呟いた。 自分の後ろから、視線を感じた。 振り向くとそこは子供部屋で、当然ながら志保里の部屋だ。 その扉が二センチ程度の隙間を作り、漆黒の闇を覗かせている。 誰か……いるの? そんな筈がないことは、自分が一番よく知っている。でもそう思わずにはいられないほど、見られていた気がした。 足音を立てずに近づいてみると、極々うっすらと月明かりが、奥の白い壁を照らしているようだった。無意識に右足が、半歩だけ後退した。足先に冷たい空気が触れたのだ。理由の分からない不快感が、首筋を舐める。 閉めなきゃ。 危険を回避すのと同じように、由衣は反射的にそう思った。ドアノブを掴もうと視線を下ろす。ドアの隙間から、白い目が見上ていた。 ガラスが割れるほどの悲鳴が壁一面に突き刺さる。 由衣の声に振り向いた男二人は、開かないドアを諦めて駆け寄った。 「由衣! どうしたんだ!」 腰を砕かれ、立つことができずにいる由衣を抱き支える智樹。 由衣の身体は、まるで電圧をかけたかのように激しく震えていた。
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