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『……いの』
「何?」
『ぅ、…パ、パ』
何か伝えたいらしいのだが、言葉がうまく出ないらしい。泣いているようにも聞こえる。
僕は携帯を片手に家を出て車に向かう、行かなきゃいけない気がした。
「今から向かうからね」
『…う、ん』
今できる精一杯の返事だろう。
念のため、電話は切らないようにと伝え携帯をポケットに入れ僕は忠信さんの家に向かう。
彼が住んでいるのは彼の父親の実家らしい、一度だけ招いてもらい行ったことがある。
町の外れにある大きな屋敷で、今は娘さんの叶恵ちゃんと二人暮らしだから広すぎると呟いていた。
(忠信さん…)
移動中、色んな考えが浮かぶ。
叶恵ちゃんが電話をしてくるということは、忠信さんが電話出来ない状況であるということ。
嫌な汗が吹き出してくるのが分かる。
(急がないと)
幸い、夜中だということもあり混雑はしていない、信号も夜10時を過ぎると大通り以外点滅になるので赤に引っ掛かることなく、進めた。
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