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ふと、僕は手を止めた。
こんなに開けようとしてるのに隙間どころか、ピクリとも動かず開く気配が無い。
箪笥の戸越しに感じる確かな人の気配、誰かが居て、重傷なのはこの血だまりで分かるのだが、疑問に思う。
(忠信さん…なのか?)
忠信さんは30代後半の割には健康的で、風邪ぐらいはひくが重い病気は持っていないから、重症だとは思えない。
怪我?
なら何故救急車じゃ……
「…」
僕は思った。
怪我か何かなら救急車を呼べばいい、何故僕を呼んだのか。
何故物置に?
何故箪笥?
隠れている?
箪笥の向こうの【誰か】はわざわざ物置に隠れているならば、何故。
「っ!!」
嫌な二文字が頭に浮かぶ。
もし、忠信さんでもなく、叶恵ちゃんでもなく、僕でもない…誰かが居るならば。
もし、箪笥の向こうの【誰か】が忠信さんで、何かから…誰かから逃げてここに居るならば…。
叶恵ちゃんは、一人だ。
僕は箪笥の中の【誰か】を置いて、叶恵ちゃんの所に向かう。
普通なら、救急車でも警察でも呼ぶのだが、今の僕には叶恵ちゃんの安全確認が何よりも重要事項だった。
箪笥の中の人は死んでいて、忠信さんだったら。
今も、犯人が潜んでるなら。
危ないのは僕か、叶恵ちゃん。
待つように言った玄関には、叶恵ちゃんは居ない。何処に居るのか。
「きゃああぁぁああ!!」
「、か、叶恵ちゃん!」
寒いから中で縮こまって待っている事に期待をし、扉に手をかけた時、悲鳴が聞こえた。
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