#01

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ふと、僕は手を止めた。 こんなに開けようとしてるのに隙間どころか、ピクリとも動かず開く気配が無い。 箪笥の戸越しに感じる確かな人の気配、誰かが居て、重傷なのはこの血だまりで分かるのだが、疑問に思う。 (忠信さん…なのか?) 忠信さんは30代後半の割には健康的で、風邪ぐらいはひくが重い病気は持っていないから、重症だとは思えない。 怪我? なら何故救急車じゃ…… 「…」 僕は思った。 怪我か何かなら救急車を呼べばいい、何故僕を呼んだのか。 何故物置に? 何故箪笥? 隠れている? 箪笥の向こうの【誰か】はわざわざ物置に隠れているならば、何故。 「っ!!」 嫌な二文字が頭に浮かぶ。 もし、忠信さんでもなく、叶恵ちゃんでもなく、僕でもない…誰かが居るならば。 もし、箪笥の向こうの【誰か】が忠信さんで、何かから…誰かから逃げてここに居るならば…。 叶恵ちゃんは、一人だ。 僕は箪笥の中の【誰か】を置いて、叶恵ちゃんの所に向かう。 普通なら、救急車でも警察でも呼ぶのだが、今の僕には叶恵ちゃんの安全確認が何よりも重要事項だった。 箪笥の中の人は死んでいて、忠信さんだったら。 今も、犯人が潜んでるなら。 危ないのは僕か、叶恵ちゃん。 待つように言った玄関には、叶恵ちゃんは居ない。何処に居るのか。 「きゃああぁぁああ!!」 「、か、叶恵ちゃん!」 寒いから中で縮こまって待っている事に期待をし、扉に手をかけた時、悲鳴が聞こえた。
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