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聞こえたのは庭の方。
行ってみると叶恵ちゃんは尻餅を付いた状態で震えている。
「叶恵ちゃん!」
上を見上げ恐怖の色を帯びた目を大きく見開き固まっている。呼び声にも反応がない。
何があるのかと、叶恵ちゃんが見ていた所を見たが何もない。
「叶恵ちゃん!叶恵ちゃん!」
「…な、い」
「え?」
こっちを見た叶恵ちゃん、てっきり呼び声に応えてくれたのかと思ったけど、目の焦点が合ってない。
「ごめ、なさい」
「叶恵、ちゃん?」
「ごめんなさい」
(何に謝ってるんだ?)
後ろを振り返ってみるも、ただ庭が広がるだけ。
「叶恵ちゃん、どうして此処にきたの?」
そっと頭を撫でながら出来るだけ優しく、ゆっくりと話す。すると段々と叶恵ちゃんの目が僕を捉える。
「彰…お兄ちゃん…」
「うん、」
「人形…が」
「人形?」
叶恵ちゃんは何かを警戒するようにキョロキョロと周りを見回しながら、応えてくれる。
人形とは何なのか、僕も叶恵ちゃんのように周りを見てみる。
─ガサッ
「ヒッ!」
「ん?」
何かが動いた、叶恵ちゃんは小さく悲鳴を上げ口元を抑え、また震え出した。
僕は音のした方に目を向ける、花壇の奥に何かある、物体のようだ。
見に行こうとすると叶恵ちゃんは引き留めるように弱々しく僕のYシャツを掴む。
「…見に、行くの?」
「え?」
「ダメ…見ちゃ」
泣くのをこらえ、必死に僕を引き留めているように見えた。
花壇の奥にあるのは1メートルもない木だ、大人が隠れるには小さいが、小柄な大人だっている。
もしかすると、侵入者かもしれないため、確かめないといけない。
「でも、何なのか見なきゃ…」
「…わたしも見る」
危険ではあるけど、離れてしまうのも危険だ。手も離してくれそうにない。
仕方なく叶恵ちゃんには、前に出ない条件で側に居させることにし、ゆっくりと近付いた。
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