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冥土は以前興奮気味で、ソウサクイヨクとやらがつくった物語を浜路に語ってきかせ始めた。こうなったら冥土は止まらない。
何を言っても冥土が取り合ってくれないだろうことは先刻承知の浜路はおとなしく冥土の物語に聞き入ることにした。
浜路は冥土の話を聞くのが嫌いではないし、というか好きだ。
冥土は語り部が上手い。何度か野宿した時も、草木の毛布にくるまって冥土の声に耳を傾けていると自然と意識が遠のいていくのである。
何より冥土が語って聞かせてくれる物語を誰よりも楽しみにしているのはきっと自分だな、と浜路はそんな自分にため息をもらしながら、くすりと笑って変てこメガネの声音に聞き入った。
はて、あの真っ赤な花を見つめていた冥土はなんだかとても寂しそうだったな、と心のすみっこにふっと思い浮かべながら。
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