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私は杜乃ちゃんの条件を飲み、杜乃ちゃんは私を送り出してくれた。
だから、私は白い息を吐きながら自転車をこいでいる。
ただでさえ弱い陽の光は、北西より厚く広がった冬雲に覆われしまった。
「きゃっ」
と、私は手を顔の前にかざす。
つむじ風。
お気に入りのツインテールが弄ばれる。
寒い。
踏切待ちを機に、私は髪を整え、マフラーを巻きなおす。
目の前を、東京方面からやってきた電車と千葉方面からやってきた電車が行き違う。
遮断機が上がり、私は再び自転車をこぐ。
イヤホンから流れる曲目が変わる。
何曲目だろう。
距離の割に時間が経過している。
千葉県市河市。
千葉県西部、東京都と隣接するこの街に私達は暮らしている。
その立地上、多くの人口と交通量を抱え、たとえ自転車であってもスムーズな通行に支障をきたす場合がある。
特に今は年末、街の中心部ともなるとかなり混雑している。
それにしても……前の自転車、遅い。
こんなに混んでるのに、2列にならないでよ。
カップルで、楽しそうにさ。
あ~あ……私にもいい人、早く現れてくれないかなぁ~。
と、そうこうしているうちに道が開けた。
急ごう。
お家までは、あともう少し。
私は、ペダルを踏む力を強める。
石鳥居がみえてきた。
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