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「退魔巫女さんになりたい気持ちは本物じゃない」
は?
いや、本物ってか、その……
「退魔巫女さんって……なに?」
「魔の者をやっつける巫女さんのことだよ……だから、退魔巫女さん」
予想通りの答えが返ってきた。
なんか話が堂々巡りになりそうな気がするから……一旦、落ち着いて考えてみたほうがいいかもしれない。
私は襖を閉じ、座布団の上でお父様と向かい合う。
お茶を口に含みながら、次の言葉を探す。
お父様も同様にお茶で口を潤して……先に言葉をみつけた。
「ハヤちゃん、母さんみたいになりたいんでしょ……小さい頃からずっと言ってたじゃない」
まぁ、それは否定しないけど……
「それが退魔巫女さんってのになるのとどう繋がるの? お母様、そんなんじゃなかったよ」
お父様は首を左右に振ってるけど……そんなはずはないよ。
だって……
「お母様、こんな服着てなかったよ」
私は、着ている巫女装束の襟を摘まんでみせた。
「あぁ、それ……それは、母さんのは旧モデルだったからね」
そう言えば最新モデルとか言ってたわね。
「とにかく、母さんは立派な退魔巫女さんだったよ……それにお祖母さんもそうだったんだって」
お父様の言い回しには訳がある。
お父様、婿養子なの。
お父様が婿入りしたときにはお祖母様もお祖父様も死んじゃってって、お父様も会ったことないんだって。
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