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確かに、嫌な夢だったけど……クラスのみんなの前でこれは恥ずかしいかも。
私は慌てて、ブレザーの袖を両目に当てた。
かなり湿ってしまったのがわかる。
そのとき……パシャリと、シャッター音が教室に鳴り渡いた。
「おい、こら、神聖な授業中になにしてる?」
先生はシャッター音のした先へと向かう。
表情からは、若干の安堵の色が読み取れる。
でも、安堵は束の間だった。
「やったがねぇ~、スクープだがねぇ。体罰教師、授業中に女子生徒を泣かせる……こりゃ、ええ記事になるで」
デジカメを構える少女の笑顔に、先生の表情が凍りつく。
少女の名は、荒伊庭(あらいば)杜乃(もりの)。
焦げ茶色のショートヘアーがボーイッシュな印象を与える美少女で、スタイルも抜群。
羨ましいぐらいの容姿の持ち主なんだけど……残念なことに、訛ってる。
そんな杜乃ちゃんは、新聞部期待のスーパールーキー。
常に新鮮で面白いネタを追い求めてる……先生にとっては、洒落にならない事態の発生だと思う。
「ご、誤解だ。俺は、体罰と言えるほど強くは叩いていない」
先生は、焦って弁明を始めた。
「でも、叩いたことは認めるんだぎゃな」
「そ、それはそうだが、俺は那須野のことを思ってだな……」
「なるほど、なるほど、だからってそりゃにゃ~わな」
杜乃ちゃんはメモ帳を取り出し、先生の弁明をサラサラと書き記し始める。
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