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そこへ……
「あの、先生……授業」
救いの声。
声の主は、確か……脇屋(わきや)君。
地味で目立たない子なんだけど、言うとき言うんだ。
ちょっと、感心。
同時に……ちょっと、同情。
余計なことしやがってと、クラスのみんなの目が訴えてる。
先生の授業……信じられないぐらいに退屈なの。
先生の手にかかれば、偉大な文豪達の名作ですら子守唄と化すって感じ。
「そうだな。すまなかった」
再開された授業。
拷問にも近い時間。
既にクラスメートの何割かは意識を手放している。
これが千葉県立総武高校1年7組にとって、日常の光景。
たぶん、他のクラスでもそうだと思う……先生が授業を行う限り。
だけど、先生の授業は私に非日常性を味わせてくれることもある。
次々に眠りに落ちるクラスメート達。
視界良好。
いつも私の視界を遮るみんなの背中が低く、沈み込んでいる。
壮観。
いつも見上げるみんなの頭を、今は見下ろしてる。
私は、非日常をしばし満喫した。
それから……やっぱり、無理。
「な~す~の~」
って、なんで私ばっか。
私は、机に突っ伏したまま後頭部を押さえた。
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