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授業は終わった。
私は大急ぎで掃除当番を済ませ、教室を立ち去ろうとする。
だけど……
「あ……名古屋県民」
目の前には羨ましいぐらいに膨らんだブレザー。
見上げると焦げ茶色のショートヘアー。
「たぁけ、名古屋県なんかあらせんわ」
杜乃ちゃんだった。
「冗談よ。愛知県でしょ」
「笑ない冗談はやめるみゃ~」
実は私と杜乃ちゃんって、冗談とかも言い合っちゃう仲なんだよね。
「そんなことより、颯、おみゃ~さ部活サボる気やったやろ」
同じ部活だし。
千葉県立総武高校新聞部。
数少ない1年生部員なの。
だから、杜乃ちゃんが咎める気持ちもわかるんだけど……
「言ったじゃない。今日は、私、用事あるから早く帰るって」
「そうやけど、ちょびっとぐりゃぁ~えぇやろ」
「ちょびっとって……杜乃ちゃん、いつもそう言って結局、長くなるじゃない」
ほんと、そうなの。
杜乃ちゃん、新聞の活動に執念燃やしてるから。
それが、杜乃ちゃんが新聞部期待のスーパールーキーたる由縁。
だけど……
「ほんと、今日は勘弁して」
「大丈夫やから、今日は長くならせんて」
「ほんとぉ~?」
「ほんと、ほんと、信用してぇや」
あんまり気乗りしないけど……このまま帰っちゃうのも申し訳ないかもね。
「わかったわよ……なに?」
「おお、あんな……冬休みの特集記事の企画考えるみゃ~」
「却下」
確実に長くなるよね。
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