鳥居

4/6
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
「鳥居か。俺にはわからん。」ちょっと不機嫌になりながら俺は答える。 不機嫌になるのは訳がある。 鳥居は濃い緑に囲まれ、赤緑系色弱の俺には鳥居が見えないのだ。赤い鳥居が緑に溶け込んで区別がつかない。以前、舞と鳥居のことで賭けをして酷い目にあった。 舞は鳥居があると言って譲らない。 俺は俺で、視力左右2,0で視力の良さには自信があったので、自信満々高価な指輪を賭けたのだ。 しかし、残念ながら自分が色盲であることを忘れていた。と言うか、赤色が周りの緑に溶け込んで見えなくなってしまうとは露ほども思っていなかったのだ。 確かめに行ってみると、全く見えなかった鳥居が根を生やしたように当たり前のようにそそり立っていることに驚いてしまった。舞に嵌められた!と思ったがもう遅い。 給料の3ヶ月分が飛んでしまった。 そして婚約という流れとなってしまったのだ。でもまあ、踏ん切りがついて、良かったと思っている。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!