鳥居

6/6
前へ
/6ページ
次へ
そして俺は今、恐ろしい喪失感に包まれている。舞の存在の大きさに呆然としていると言ってもいい。俺はこんなにも舞が好きだったのか。無くなって初めてわかる有難さと言うが、そんなもんじゃない。 この俺の真っ暗な気持ちを人へ伝えるのは困難だ。 後追い自殺ってアホじゃないか?となんとなく軽く考えていたが、いや違う。人間、そんな気持ちになるんだ、ということを俺は初めて知った。俺をアホと思うならそう思ってもらっても構わない。そんなことはどうだっていい。 俺は舞なしでは生きられないのだ。 そして謎が解けた。鳥居にぶら下がっているものの正体を。舞は四原色で世界を見ていた。俺はそう確信している。 4原色で物を見てる人はきっと未来が見えているのだ。あの、鍋の具材を買っている未来の俺を舞は見ていた。 そして、俺は、ロープを手に取り、鳥居へ向かった。 鳥居にロープをかける。 そう。これでいいんだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加