4人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
「あら、それでハッピーエンドなんて思ってるんじゃないでしょうね」
突然の声。
真横からだった。
俺と黒助は目を見張る。そこには白いパジャマ姿の、俺の肩にも満たない身長の、葛葉(二十六歳)の姿があった。
険悪な表情を彼女は浮かべていた。小さな矮躯に怒気を迸らせて、軽蔑の眼差しを俺達二人に投げかける。
「葛葉かっこ二十六歳……!? どうしてお前がここに?」
「葛葉かっこ二十六歳……も、もしかして僕たちの話を聞いてたの……?」
「人の名前に年齢を加えながら驚かないでくれませんこと!? 嫌がらせなんですか!?」
葛葉が拳を振り回して顔を真っ赤にして怒鳴る。
うん、まあ、嫌がらせ以外の何物でもないのだけれど。
俺と黒助は顔を見合わせる。そんな俺達に、葛葉は自分がここに来る経緯を語る。
「私の病室のトイレが壊れたんです。だからナースコールを使って、お医者様に外のトイレを使わせてもらえるように頼んだのです。そして廊下を歩いていた時ですわ。いきなり横の壁が、目の前に倒れてきたんですの。正直……ちびりましたわ」
最後の無駄な告白はいらないだろ。
「何事かと思って聞き耳を立てれば先ほどの会話です。全部、聞かせてもらいました」
ということは、だ。俺ががむしゃらに口にした台詞も何もかもを、聞いていたというわけだ。
う、わ……。
俺は頭を抱えてその場にうずくまる。横で黒助がおなじ体勢でうずくまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!