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「あら、それでハッピーエンドなんて思ってるんじゃないでしょうね」  突然の声。  真横からだった。  俺と黒助は目を見張る。そこには白いパジャマ姿の、俺の肩にも満たない身長の、葛葉(二十六歳)の姿があった。  険悪な表情を彼女は浮かべていた。小さな矮躯に怒気を迸らせて、軽蔑の眼差しを俺達二人に投げかける。 「葛葉かっこ二十六歳……!? どうしてお前がここに?」 「葛葉かっこ二十六歳……も、もしかして僕たちの話を聞いてたの……?」 「人の名前に年齢を加えながら驚かないでくれませんこと!? 嫌がらせなんですか!?」  葛葉が拳を振り回して顔を真っ赤にして怒鳴る。  うん、まあ、嫌がらせ以外の何物でもないのだけれど。  俺と黒助は顔を見合わせる。そんな俺達に、葛葉は自分がここに来る経緯を語る。 「私の病室のトイレが壊れたんです。だからナースコールを使って、お医者様に外のトイレを使わせてもらえるように頼んだのです。そして廊下を歩いていた時ですわ。いきなり横の壁が、目の前に倒れてきたんですの。正直……ちびりましたわ」  最後の無駄な告白はいらないだろ。 「何事かと思って聞き耳を立てれば先ほどの会話です。全部、聞かせてもらいました」  ということは、だ。俺ががむしゃらに口にした台詞も何もかもを、聞いていたというわけだ。  う、わ……。  俺は頭を抱えてその場にうずくまる。横で黒助がおなじ体勢でうずくまっていた。
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