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 魔薬には多くの種類がある。そして黒助は魔薬を摂取しなければ生きられない体になった。そこで黒助の選んだ魔薬というのが、性転換の効能を持った魔薬だったのか。 「勿論魔薬の摂取は基本的に重罪だからね。医療用という事で特別に、僕は医者から魔薬を受け取っているんだ。こればっかりは、生命を維持するためだから、医者からも許可が下りている。魔薬の取り扱いに関しては、国家試験に合格した医師は、合法的に取り扱うことができるからね。まあ……だからといって、強力な魔薬を使う訳にもいかないから……比較的効果が大人しい効能のものを選んだら、自然とこのクスリになったんだよ。それに幸い、あまり男の状態と女の状態で、僕の外見は変わらないみたいだから」  何故か黒助に睨まれる。こいつ……なんかいじけてないか? 「ふーん、それで、どうして葛葉はそんなに怒ってるんだよ?」  俺が先を促すと、葛葉は舌打ちでもしそうな険悪な表情を浮かべる。呆れてもいるようだった。  俺を無視し、葛葉は黒助に問いかける。 「私の前で黒瀬様、貴方は半分同性で、半分異性の奇妙な存在なのですわ。それでも貴方には確実に半分、『女』の部分があるのです。私が過敏に嫌う『女』の部分が」 「……何が、言いたい」  黒助が苦しそうに訊いた。言葉では疑問を呈しながらも、もう黒助の中で答えは見えているようでもあった。俺には全然見えないけど。 「私の口から言わなければならない事でしょうか? まあ……貴方はきっと、自分の口から言うつもりはないんでしょうけれど。仕方がないから私が言うと――黒瀬様、貴方が釘宮様をカウンセリングした本当の目的、あるでしょう?」  そこまで言って、葛葉は自分の言葉に首を振った。 「いいえ、カウンセリングそのものが、一つの手段でしかなかったのですわ。女を拒絶するからこそこの私は、女の事について誰よりもよく知っているつもりです。知りすぎるから、女という生き物の事を、気持ち悪いとも言えるんですけど」  そうだ、そもそも。  黒助が俺のカウンセリングに付き合ってくれた理由。その明確な答えを、まだ聞いていない。
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