10/10
前へ
/40ページ
次へ
「はっ、頑張れよ」  俺は小馬鹿にするように鼻を鳴らし、ぽんっ、と軽く黒助の頭を叩いた。 「だが覚悟しろ。俺の釘への愛は絶対だ」 「ふん、すぐにでも僕に、メロメロになるに決まってる」  お互いに、睨み合うようにして視線を交わした。この空気、この雰囲気が、俺達二人に一番合っている気がした。  言ってることは滅茶苦茶だけどな。どちらからともなく笑いが漏れる。  大変な一日だったな……俺は今日を振り返り、昨日までの日々からの、あまりの変質に驚く。  それでも、悪い気はしなかった。 「ああ、そういえば」  俺はふと思いつく。 「黒助ってさ――元々、男か女、どっちなんだ? 俺がはじめて性別を聞いた日、お前は女だったけど。でもそれ以前から黒助は、ずっと性別の変換を繰り返してたんだろ?」  黒助は目をぱちくりと丸くする。それから黒助は、妖艶に唇を釣り上げる。悪戯っぽい動作で唇に手を当てながら、からかう様に黒助は言った。 「さあ、どっちだと思う?」
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加