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「自分がある日女になってる事を物ともせずに、釘への愛を語ってる君が一番異常だと、僕なんかは思うけどね」  黒助が何か言葉をぶつぶつ口の中で滞留させている。俺は聞こえかったことにした。  そんな時だった。 「釘宮様!」  小鳥のさえずるような可愛らしい声が、俺の鼓膜を震わせる。振り返ると、金髪で髪が長い、白いパジャマを着た女が、俺に向かって正面から飛びついてくるところだった。 「ああ、釘宮様、今日もご機嫌麗しゅう! 葛葉は釘宮様と一晩離れただけでこんなにも胸が張り裂けそうな気持ちにおろろろろろろ……」  そして俺の耳元で吐いた。 「うぎゃぁぁあああ!?」  俺は悲鳴を上げてもんどり返った。ごろごろと床を転がり、いきなり燦然とした輝きを放つ吐瀉物を耳にかけられた精神的ショックに、身を悶えさせる。  金髪女――葛葉(十四歳)は、苦しそうにお腹を押さえながら、涙目で呆然としていた。 「あ、れ……釘宮様、どうして、女性などに……?」  葛葉(十四歳)は真っ青な顔で俺の体を凝視している。こういう事態になって初めて、ああ、俺の体は完全に女なのだなと実感した。  葛葉(十四歳)は極度の同姓拒絶症である。  自分と同じ女に対しては極端な拒絶反応を示し、触れただけで吐き気を催すそうだ。葛葉(十四歳)にとって同姓という存在は忌むべきモノで、駆逐すべき対象であるという認識がある。逆に異性に対しては一瞬で懐く傾向にあるので、かつて男だった俺は相当葛葉(十四歳)からは懐かれていたのだが……。
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