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一体どこのどいつから、おれの日程や婚約者のことを聞いたのだろうか。いつも小うるさくその辺をかぎまわっている、記者の手合いだろうか、それとも使用人の誰かだろうか。
ズボンの入った包みを抱えた少女の瞳を、彼は訝しげに覗き込んだ。
すると、どうしたことだろう。表情に乏しく、陰気で、能面のように見えていた彼女が急に、鬼子母神か何かの化身のように見えてきたのである。天女でもあり、鬼女でもある。そんなものに。
それと同時に、下半身から体が冷えてきた。まるで、冷たい水に腰まで浸かっているかのように。
更には、黒いと思っていた少女のその瞳、それが真紅に見えるようになっていた。柘榴(ザクロ)のように赤い、鬼の目に。
ぞくりとした。
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