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が、自立とは言っても、いかにりて身を立てるかという具体策はないのだ。
須磨子には、何かしら非凡な才があるわけでもなく、また、人より優れた技能があるわけでもなかった。ついでに、自立に必要な生活力その他を身に付けようという向上心、向学心もなかった。
具体策その他のないまま親の元を飛び出して、何が何でも、と、がむしゃらに動き働くような闘志も無鉄砲な行動力も、大店の一人娘として、さんざ可愛がられのんびりと育てられた彼女には皆無だった。
自立なる「夢」を語りうっとり空を見つめる。須磨子はそんな、夢見がちでおっとりとした娘だったのである。
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