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夢見がちなこの娘には事あるごとに縁談やら同じ年頃の娘の許嫁の話やらを繰り出してくる両親は、大層煩わしいものに思われた。
だからといって、いきなり家を出て女の独り暮らしを始めるのにはどうにも腰が引けて。それで、自立したモダンガァルを気取りながらも親元に留まり、結婚話を避けてかわしてはぐらかしつつ、ずるずると日々を浪費するように過ごしているのである。
決して、それに後ろめたさを感じないわけではない。が、後ろめたく思っても、それはちっとも積極的な行動に結び付かず、ため息となって空中に吐き出されるばかり。実にならない。
事あるごとにため息をつく娘を気遣って、両親は、下男に好物の洋菓子を買ってこさせたり、はやりの紅を与えたり。
しかしその心遣いが、具体性を帯びない「夢」とはいえ、自立を志す彼女には逆に苦しい。
そんなこんなで須磨子は、家に居づらくてならないのだった。
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