370人が本棚に入れています
本棚に追加
芳一は見たところ二十六、七。女形のような躰に浅葱の着流しなど纏い、手には焦茶の革手袋などはめていた。
ほっそりした輪郭に細い吊り目をしていて、これまた高い鼻の先はつんと上がっている。両端が上がり気味の唇は薄いが、しかし大きい。
簡単に一言で言えば、「狐の面を思わせる顔立ち」だ。どことなく市松人形のような緋沙子とはちっとも似ていない。
髪だって、緋沙子のが真っ黒で、緩いうねり模様を描きながら重たげに落ちているのに対し、芳一のそれは、狐の毛のような金茶でさらりと軽い。
おそらく、二人が並んでいるのを見て、兄妹と当てられる人間は少ないだろう。
芳一は、元より細いその目をさらに細めてより狐面らしくして、革手袋の手で愛しげに、大きなリボンのついた妹の頭を撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!