エピソード2

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うちの両親は医者と看護師というありきたりなものだ。 家にいないことも多いし時間も仕事に縛られてる。 「二人からもなんとか言ってくれ、こんな展開はおかしいと」 平然と俺の上に座る彩花。 今まで兄妹ということを知っている二人ならわかってくれるはずだ。 俺なんかより頭のいい両親なら安心だな。 「彩花、本当に大丈夫なのか?」 「私は兄さんと結婚したいです、無理なら自殺します、本当はゆっくり進めるつもりでしたが、兄さんがあんな券を3枚もくれてここしかないと本心をさらけ出して爆死覚悟です」 「よかったわねえ、彩花」 「優騎、男として彩花をちゃんと守りなさい」 こいつらなにを考えているんだ、まるでわからん。 なんでよりにもよって二人とも彩花よりなんだよ、おかしいだろ。 兄妹で育ててきてその兄妹が義理とはいえ愛し合うなんて一波乱あって然るべき。 「彩花はお兄ちゃんのどこが好きなんだ?」 「優しいとこ」 「嫌いなとこは?」 「包茎、短小、足が短い、腕も短い、顔がかっこよくない、ナルシスト、頭悪い、運動神経よくない」 「お前言っていいことと悪いことあるだろ!?」 内面を褒められて少し嬉しくなったのにどうして外見は全否定。 しかも包茎という生まれつきの身体的特徴を馬鹿にするなんて、そんな子に育てた覚えはない。 「それでも優騎が好きなの?」 「この世で一番好き、愛してます。兄さん以外の男は全部ゴミです。春馬さんも勿論好きです、でも兄さんは別格です、一番かっこいいです、アイドルよりも俳優よりも誰よりも魅力的です、私は兄さんに出会えてなにより妹で世界一幸せです、兄さんほど聡明で慈悲深く卓越した人間はいません」 「嫌いなとこは?」 「包茎、短小、足が短い、腕も短い、顔がかっこよくない、ナルシスト、頭悪い、運動神経よくない、人間性が悪い」 何故コイツラのコントに俺は付き合わないといけないんだ。 だいたい俺はナルシストではないし頭は普通だし運動神経だって普通だ、他は悔しいが認めておいてやる。
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