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ふと、目が覚めた、というか、夢の中に何か入ってきたというか……つかなにか聞こえる。
「彩花を愛している、彩花を愛している、彩花を愛している、彩花を愛している、彩花を愛している、彩花を愛している」
ずっと呪詛のように繰り返される言葉。
耳元で聞こえる…………普通の人間なら驚いたりするかもしれない。
幾度となくされたことがあるし、慣れると言ったらおかしい。
それでもこんなことで俺を洗脳できると思っていることは可愛い。
しかし寝れないし終わる気配がないし。
ここで起きたりしたらなんか俺と彩花の関係にヒビが入ることになるかも……避けたいな、それは。
それにたまに起きるがこれ以上なにかしたりすることはない。
最初はビックリして色々勘ぐったけど耳元で一時間ぐらいそれを呟くと満足して寝る。
本当にそれだけだ、なにか寝込みを襲うとかはしないし。
女の子のまじないみたいなものだ。
女性誌に乗ってそうなくだらないもの。
それに毎日というわけではないし、気の済むままやらせてやればいい。
だが眠いから寝返りを打つ振りをして反対側を向いた。
これなら怪しくないし怪しまれない。
「…………避けてるんですか?」
酷く冷たい声が背中から聞こえた。
普段の彩花からは考えられないそれはちょっとイヤだな。
もう一回寝返りを打って彩花の方を向いた。
「だから兄さんが好きなんです」
ああ、俺は案外怖がってるのかな。
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