不良少年と不思議な少女

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  買ったばかりの白いワンピースをはためかせて、私はゴキゲンだった。 ママと手をつないで、楽しいお買いもの。 これからファミリーレストランに行って、二人でお食事をするはずだった。 それなのに―― 真っ赤な飛沫が、私の白いワンピースに無数の点を作る。 知らないお姉さんが、ママのお腹に何かを突き刺している。 今ならわかる、これはナイフ。 優しい笑顔に騙されて不用意に近づいてしまった事を後悔するほどの余裕すら、その時の私には無かった。 つんざく悲鳴と濃厚な血の香りの中で、ママの笑顔だけが鮮烈に私の記憶の中に刻み込まれていた。
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