沖縄

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 僕はまたこの地に降り立った。鉄の固まりである飛行機に乗って肩に掛けたカバン、焼けたような空気が肺を刺激して帰って来たのだとそう思わせる。  人の波に逆らわず観光客に混ざり飛行機から吐き出され、到着口に少し歩いていくと新装したばかりの空港は最新の設備へと変化していて所々ペンキが剥げたり罅割れていた場所なんか見当たらない。  煙草を吸いながら新聞を読むサラリーマン、蕎麦を啜る観光客、客を呼び込む旅行会社の青年、アナウンスが耳障りじゃない程度に鳴り響き遅れている飛行機の謝罪を繰り返している。  荷物待ちをする客を横目に僕はその場所を素通り、一足先に到着口を出ると見覚えなんか無い空港のホールに出た。  ざっと見渡すとお土産や雑誌に地元名産を使った食品が並び、おばさんが元気に会計をして商品を手渡している。  流れてくる汗がシャツに染みて思わず袖で拭い、目に付いたアイスをおばちゃんを呼んで買う。  少し外から歩いて来ただけなのにこの汗の量は流石沖縄、というべきか。  アイスを食べながら外へ出れば照りだされる太陽が文字通り僕の肌を焼き、温められた空気が肺を循環して不快にさせると同時にこの不快さが改めて別の場所に来たのだと思う。  手で影を作り太陽を見上げてみるとお昼前だと言うのに自らの力を主張をしている。  普通ならこんな所でお目に掛かれない植えられた熱帯地域の木々を鼻で笑い、巨大なシーサーの置物を見て呆れる。  何時から守り神は観光客を満足させるマスコットへと成り果てたのか、それを背に写真撮影を行う旅行客を見れば第三次産業様様だと思う。  観光客様がお金を落としていってくれるからこそ成り立つ生活。正にお客様は神様だ。  僕は内心でどうかここの為に財布の中身を全部落として行ってください、と願いを込めてタクシー乗り場へと近づく。
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