第一章

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「君、これはいったいどうなっているんだね」 「……すっ、すみません……!」 「誰だったかな、あー、名前忘れたけど」 「横山社長。せめて社員の名前ぐらい、覚えていてくださいよ」 「いいじゃないか、日向が覚えていたらいい」 「社長。お言葉ですが、私は日向ではなく、部長です」 「……本人には変わりない」 「黙れ」 「はい」  もめている。  朝から新人のミスで揉めている。  日向部長は横山社長の次男なので「黙れ」と暴言を吐いてもまったく微動だにしないのだが、社員として働いているこちらの身にもなっていただきたい。  社長にむかってその口の聞き方は心臓が縮こまりそうで、実際周りの人間はせっせこと普段よりも仕事に夢中だ。 「あーあ、お腹空いたなあ」  
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