プロローグ

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「はあ、疲れた」  どさり、とカバンを乱雑にベッドの上に放り投げる。  それは就活用に買ったもので、仕事場で使うと思っていなかったものだから、就職して三年目になる林田星野のそれは、随分と年の割に年季が入っていた。  そろそろ買え時なのかもしれない、と思いながら、星野は、もうすぐ春だというのに暑苦しく足につきまとうストッキングを、伝線しそうな勢いで脱いだ。  彼女が働いているのは大手企業広告代理店。  けれどそんなものは肩書きそのものだ。  星野が働いているちっぽけな本部だけを都内に置いて、仕事は各県に散らばった支部がちょこちょことやってくれている。  それをまとめているのが、横山社長だった。  
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