紫陽花

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少女は下流域に住んでいたため、土砂の直撃を免れた。 雨が降り続けるその日、中学校は臨時で休みとなっていたが、彼女はそこへ行かなければならなかった。家財道具を上へ上へと積み上げる両親の目を盗み、濡れるのを覚悟で外に出た。 道路は浸水と呼ぶには少々大げさな程度だった。一面の巨大な水たまりが、緩やかな坂を勢いよく下へ下へと流れていく。その深さは2センチほどだった。 大丈夫、行ける。 彼女を学校へ駆り立てたのは、幼い恋心だった。焦がれた人との『約束』があった。 《誰もいない学校で、一日中一緒にいよう》と、その人が言った。
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