紫陽花

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1階に降りて愕然とする。水は膝まで来ていた。 長靴の丈を超えた水位を確認し、無意味と分かっていながら転がっていたそれに足を突っ込んで外に出た。 水は一気に靴の中に入り込み、ごぼごぼと嫌な音を立てて中の空気が泡となり押し出された。 重たい。 押し寄せる水の流れに逆らって、来た道を戻らなければならない。 どうして来てしまったのだろう、危ないから絶対に外に出てはならないとの言いつけを破って。 何故信じてしまったのだろう、一度二度言葉を交わしただけのあの人との約束など。
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