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「ら……羅刹よ、
もしや分かったかもしれん」
息も絶え絶えの羅生門は弱々しく口を開く。
「奴は…
術を使う時唱えないと発動しないのではないか?
奴に唱えさせる隙を与えなければもしや…」
片目を斬られ、また我が身を犠牲に斬られた友の傷口を見て沸々と闘志が漲る。
「うむ、ありがたい。
友よ貴様は休め。
また共に闘おうぞ」
羅生門は羅刹に託した様に静かに目を瞑る。羅刹は怒りに満ちた憤怒の形相で睨み付け、剣を持つ手の血管が浮き出る。
「貴様等は羅生門の手当てをせい!
結城よ、もう好きにはさせぬ覚悟せい!!」
一方結城は斬られた背中の傷がジワジワと体力を奪っていく。致命傷では無いがこのままでは明らか不利になるのは必然だった。
「ユーキ=シャーロットの名に命ず……」
「術は唱えさせんと言ったろうが!」
唱えようとする結城に、それをさせまいと素早く斬りつける。バックステップで何とか切り抜けるが斬られた傷口がジワリと広がりつつあった。
「……チッ、詠唱の時間が取れん」
時間を与えず攻撃する事によって傷付いた友の言葉が信憑性を増す。術を唱えさせる時間を与える事を防ぐ連撃。結城は何とか切り抜けてはいたが全てを防ぐ事は出来ず斬られる事が多くなる。
「ハァ……ハァ、ちっと苦しくなってきたな」
その苦しむ姿を見て疑心が確信に変わる。
「結城よ、やはり唱える時間が必要なんだな?」
「ハッ、どうだかな」
「もう貴様には唱える時間なぞ無いと思え!」
友の予想が確信に変わった今、唱え様とする者、それをさせまいとする者、互いの攻防が激しくなっていった。
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