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魔力の暴走が如く光の乱舞が始まる。手から放たれた光が糸を引く様に散らばり、それが一つ一つ爆発しながら落下していく。
光の爆発はその範囲内の敵に無造作にダメージを与えていく。それはさながら花火の様でもあった。
「これは愉快じゃ、なる程のぅ。
怪しげな術とはこうであったか」
爆発の中に居ながら物珍しく見物していたのかと思えば、またゲラゲラと笑い始める。
「何が可笑しい?
人を…
まだ10にもならん子供を呪っておいて何が可笑しい!」
妖しくも笑い、艶やかな口元を指でなぞる仕草に変化が現れた。
「貴様のその身体は?
まさか……」
「ほんに愉快じゃのぅ、
人の中で神の子と呼ばれる結城殿が怒りの余り我を忘れ、
幻術に攻撃するとはのぅ。
妾がいつまでも此処に居ると思うたか?
これが笑わずにいられるか?
ほんに愉快じゃ」
ワナワナと震える口元、悔しさと哀しさの入り乱れた感情。自分の過ちを悔いて声無き叫びの咆哮。ただその中にもう一人腑に落ちない者がいた。
「静御前!
何故この様な事をするのじゃ?
この件については童子殿が我等二人に任せてくれた筈」
敵である羅刹が貫かれた肩を抱き怒りの表情で詰問する。
「何故?
何故とな?
誰もお主等なぞ信用しておらん。
現に結城一人にやられておろう?
確かに童子殿には内密にしてはおるが弱味を握れば問題なかろう」
「しかし!
この様な闘いなど……
いくら何でも年端のいかぬ子に呪いなど……」
「お主は煩いのう。
戦は勝てば良いのじゃ、
お主等二人よりも妾の方が効果があろう。
貴様の様な脳筋との問答も飽きたわ。
では結城殿これからも妾を楽しませておくれ」
優雅にぺこりと頭を下げると霧散。残された者は後悔、哀しみ、憤怒。
「結城すまぬ。
これは我等の本意では無い。
我を斬って晴らされるなら斬っても構わん」
「あんたを……
あんたを斬って元に戻るのか?
そうじゃないだろ……
これは俺の慢心が招いた事だ……
それにあんたを恨んでもない……」
「しかし!
この様な事赦されることでは!」
「あんたとは違う出会いがあれば良かったのにな……
撤退する……
出来れば後は追わないでくれ……」
踵を返すと結城は何やら呟き羅刹の肩の傷が塞がってゆく。ほんの少し、結城の感謝の気持ちだった。
「結城よ……
すまぬ……」
結城の行動は、敵同士ながら奇妙な友情を感じさせる行動であった。
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