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先の戦闘から数日が過ぎた。
あれから小さないざこざはあったが結城が出る程のものではなく、小康状態が保たれていた。
だが、結城達に明るい話題など無く重苦しい雰囲気が漂う。
「どうだリーサ?
何とかなりそうか?」
心配そうに聞くがただ首を左右に振るのみ、
「駄目なの……
もうずっと回復魔法をかけてるのに治らないの……
ねぇ、どうしたらいいの?
どうしたら……」
今にも泣き出しそうな、いやもう幾度となく泣いたであろう瞳で訴える。少し休むとまたユーリの治療に専念する。
結城は繰り返し、繰り返し回復魔法をかける細腕に手をかけ首を振った。
「もう……
いやありがとう、
俺が変わろう。
少し休んでくれ」
しかしリーサは小さく首を振る。
「これは私の仕事です。
自分の子供の為に疲れたなんて思いません……
このままじゃこの子はこれから光りを知らずに生きていくことになるじゃない……
そんな事……
だからこの子は私が何とかしないと……」
必死に治そうとする姿を見ると母の強さを知ると共に、自分の不甲斐なさが身にしみる。
彼はその姿を見るのが何より辛かった。自分の慢心により愛する家族に被害が出た事、その苦しみを彼は一番理解していた。
リーサはここ数日ユーリの傍で回復魔法をかけ続け、ろくに休んでもいなかったが献身的に治療を続ける。
また当のユーリもその愛情が理解している様であった。痛みは無いものの彼の世界は闇に包まれたまま。
「母さん、もういいよ。
僕は大丈夫だから。
こんなのまた見える様になるよ!
だから少し休んでよ」
愛する人に苦労をかけ、息子にもいらぬ気を使わせてしまう事が自分自身に重くのし掛かる。助爺にも聞いたが、呪いは呪った本人にしか分からないと言われ八方塞がりの様相となっていく。
(まさかこんな事になるとはな。
呪いなど俺達人間に分かるものか?
俺達人間?
まさか……)
結城に一案が浮かぶ。だがそれは目の見えぬユーリの今後を考えると、簡単に喜べそうに無い希望であった。
このままこの地に居ていつ死ぬか分からない生活を送るか、希望を捨てず彼自身の手で光を取り戻させるか、今の結城には選択する余地などなかった。
(彼等に託そう……)
ユーリにとってこの希望の光は辛く苦しいものとなる。
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