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「いよっしゃあ!
貰った!」
その日は昨晩からの豪雨が止むことが無かった。所々泥濘(ぬかるみ)が散見し歩くたびに足を取られる。
天候とは関係無く常に薄暗いその地は、人の侵入を拒むかの様に乱立された木々が続く。そんな薄暗い森の奥深くで闘いはあった。
ジメジメとまとわり付く感覚と鬱蒼とした雰囲気の中、人が動く度にカサカサと枝葉が擦れる音がする。
その一画にポッカリと開けた地があり、土砂降りの豪雨の中一人の男が勢いよく馬上より飛び掛かる。刹那、互いの声が木霊した。
「ぬう、結城か!?」
両者の怒声が交錯したと同時に辺りに鳴り響く金属音。
結城と呼ばれた男が誇らしげに手にしたのは一本の赤黒い角。
「チッ、角一本かよ!
こいつは貰って行くぜ!
退け!全軍撤退しろ!」
結城と呼ばれた男の掛け声により、険しき道を引く波の様に鮮やかに撤退して行く軍勢。
これは、皆の知っている世界よりも違う世界の物語
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