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煌々と焚かれた松明の灯りの中、思い浮かべるのは切られた角の痕。酒呑童子は苦虫を噛み殺した様な表情を見せると、刺々しい奇妙な椅子に腰掛けていた。
「結城め、あやつは何者じゃ?
おかしな術を使い我等の邪魔をしおって」
「確かにあれは只の人になき力の持ち主……
あれはもしや?」
あれとの言葉に酒呑童子の眼光が鋭さを増し、その緋い瞳で睨み付ける。
「静言ってみろ。
あれとは何じゃ?」
静と呼ばれた女性の妖が妖しい笑みを浮かべ、袖の長い着物の袖口で口元を押さえる。
「酒呑童子とあろう御方が知らぬ訳がありますまい、
あやつはもしや、神の子ではないかと」
神の子の言葉に、これまで静かに見守っていた妖達が俄(にわ)かに騒つき始める。それを鎮める様に酒呑童子は拳を握るとゴンっと肘掛けを叩く。
「ではあやつが神の子と、
神剣『村雨』という事か?」
「いやあれは村雨ではありますまい。
結城のあれは両刃の剣。
村雨とは伝承によれば片刃において、鞘から抜けば玉散る氷の刃とありまする。
奴の様な光輝く剣ではありませぬ」
訝しげな顔で静御前を見るとニヤリと笑った。
「奴の底、それか弱味を知りたい、静出来るか?」
投げ掛けられた問いに対して嬉々とした微笑みで返す。緋い瞳に映る微笑みは確固たる自信に満ち溢れていた。
「羅刹と羅生門を使いましょう」
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