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「酒呑童子様お呼びですか?」
静御前の呼び出しに妖しく光る緋い瞳が四つ。酒呑童子の城に召集された二人の巨漢の妖が跪く。
一方は羅刹、身の丈もある程の両刃の大剣を持ち百戦練磨の働きを見せる妖の将軍。
一方は羅生門、重量感のある鉄杖を持ち、その重さを感じさせない程の肉体を合わせ持つ将軍。
酒呑童子曰わく、進撃は彼等なしに成すことが出来なかったといわしめる程の妖。二人の妖は進軍する酒呑童子軍にあって正に右腕と左腕にあたり、中心的存在であった。
「ご苦労である。
そなた二人に頼み事があるのじゃ。
結城の底が知りたい。
もしくは奴の弱味となる者やその存在が判れば尚良し」
静御前の言葉に大剣と鉄杖を持つ二人の腕が更に力強くなる。その腕には血管が浮き出ており力が漲っているのが分かる。ぎらついた瞳を見開き、今にも飛び出しそうな勢いで話す。
「奴を殺しても良いと?」
二人の問い掛けに一拍置くと、妖しく微笑む赤く艶やかな唇が開く。
「ふむ……
それもやむなし……」
しかしこれまで静かに聞いていた童子が徐に口を挟む。
「いや、殺すな。
奴には興味がある。
あの力が何なのか調べる必要がある」
「はっ、
では奴の底をさらけ出してみせましょう」
そう言葉を発すると二人は消え去った。
「では、私も……」
一陣の風を纏い静御前も二人を追う様に霧散した。
酒呑童子はその風を見る。どこからとも無くフラリと現れた静御前。あやつは妖でも無い、だが人間でも無い。
何の目的があって自分に接触したのか分からないが、反逆するのであれば斬らねばならぬと拳を握る。
「静御前め、喰えぬ奴よ……」
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