闇の勇者

9/17
前へ
/563ページ
次へ
 呪文を解き放つと聖なる光を纏った鎖が無数に飛び散り、妖の身体に纏わると絡みつく様に縛りつけ爆ぜる。  眼前の敵が光の鎖に捕らわれてもがいている最中一陣の風が一騎、駆け抜けていた。 「まだまだぁ! 風は光に、光は風に…… 吹き抜けろ! 光の風…… シャインストーム!」  光の粒子を帯びた風が行く手を遮る残った妖達を巻き込み、光の粒子と共に何処かへ消え去る。力無き者達は為す術がなく逃げ惑う為、混乱が生じていた。  結城の呪文により妖達の陣形は総崩れ状態となり、中央には道が出来ていた。 「よっしゃあ~! 中央突破!」  混乱に乗じて本陣に侵攻するが待ち構えるは二人の妖。 「来たか結城! 貴様の相手は我等が!」  羅刹と羅生門が牙を見せ闘志を剥き出しに叫ぶ。 「まぁ、待ってはくれねぇわな……。 来い! レーヴァテイン!!」  結城が何も無い空間に手を伸ばすと、空間を切り裂く様に輝く剣が姿を現す。その手にした武器を力一杯羅刹に振り下ろす。  互いの持つ剣のせめぎ合いにより視線の先には火花が飛び散る。 「たった一騎で我等に挑むは良し。 だが、敵うとでも思うたか!」 「黙って縮こまってりゃあ誰か助けてくれるのか? やれる奴がやらねぇと、守れる者も守れないだろ? そういうこった」  二人の闘氣に触発され大気は震え空間に歪みが生じる。だがこの闘いにおいて、もう一方の敵は待ってはくれなかった。 「結城よ、我を忘れたか?」  鉄杖を地面に叩き付けると、地鳴りと共に鉄杖をなぎ払いにくる。 「チィッ……!? 羅生門か? 休んでくれりゃあ良かったのによ」  剣を引き横向きに転がる様に避ける。顔を上げると眼前には羅刹の拳があり、かわせる余裕も無くまともに喰らってしまう。  吹き飛ばされた中、空中で一回転し体勢を立て直すと羅生門が鉄杖を振り下ろすのが見えた。 「チィッ間に合え、 我を守り、我と共に…… 光の盾」  振り下ろされた鉄杖が眼前に迫る直前、結城の前に光の盾が展開しこれを防ぐ。  手に汗握る闘いの火蓋が切って落とされた。
/563ページ

最初のコメントを投稿しよう!

414人が本棚に入れています
本棚に追加