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「ユーリよ、許せ」
細目の瞳からは涙が零れ落ち、震える身体を支えるかの様にユーリを抱き締める。
「イレウスどうしたの?」
何事が分からないユーリは、イレウスのその行動に戸惑いを感じていた。
草原を一陣の風が吹き抜ける。心地良い風を身体に受け、背の高い雑草が頬を撫でる。
その心地良さとは逆にイレウスは震える人差し指をユーリの眉間へと向けると、互いに不快感を感じる中ズズッとめり込まれていく。
「あああぁぁぁ!」
辺りに声にならないユーリの声が響き無常にもイレウスの封印は続く。
「ユーリよ何度でも言う、すまない。
この封印は自己では解けん。
お主の為にもエルフの都で過ごした記憶と魔力の元も絶たせてもらう。
この時代、強過ぎる力は無用なのだ。
どうか、エルフの為また人間の為この封印が解けぬ様、静かに人間の世で暮らしてくれ……」
ユーリはガクッと力を落とすと、イレウスはさらに封印の力を強め完了する。
イレウスは指から零れ落ちる砂を掴まんとしていたか、もしくは天に輝く星を掴もうとしていたのか、その行為に自責の念が込み上げる。
せめてもの情け、お主の両親が産まれたシーリウスへと送ってやろう。
人間らしく人の世で静かに暮らしてくれ。
どうか幸せに…………
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