117人が本棚に入れています
本棚に追加
「本当は・・・今日、こんな仕事の格好でくる筈じゃなかったんです。」
大森の言葉から逃げようと話を変えた。
「今日の服装は、仕事が出来るキャリアウーマンみたいだよ(笑)こういう言い方は妥当じゃないかもしれないけど、近寄りがたい・・・そんな感じかな?(笑)」
「そんな風に見えます?格好だけですね(笑)私は仕事出来ませんから(笑)」
「仕事出来ない人を休日出勤させないでしょ?(笑)」
その言葉に黙った映見を見て、話を変えた。
「あのSNSに載せたカップル?の写真なんだけど、あれは上手く撮れてるよ。彼氏が彼女に気遣っている様が上手く表されてる。一瞬の表情を上手く捉えたよね。」
「あれは・・・うん。自分でもよく撮れたと思ってるんです。見てて、羨ましいぐらいに、彼が彼女を想ってる・・・そんな感じでした。」
「大内さんは?」
「え!?私?」
「そう、想ってくれてる相手居るんでしょ?」
映見はグラスの縁を撫でて少し笑った。
「あ…別れましたよ。つい、先日。」
真っ直ぐだった視線を映見に向け、慌てた大森。
「ゴメン…知らなかったから…。」
「そりゃ知ってたら、ビックリですよ(笑)エスパーか!?って思います(笑)」
店の扉が開いた。常連客のようだ。若い男性が二人と反対側のカウンターに案内したようだ。
「私…思ったんですけど…。」
「何?どうしたの?」
「この場所って、あのバーテンさん以外、見られない…他の誰からも見られない場所なんじゃ…。」
「まさか(笑)」そう言って大森が確認すると確かに声はするのだが、声の主が見れなかった。
挙動不審な二人に気付いた男性が近寄る。
「ご注文ですか?」
慌てた大森が一気に飲み干した。「じゃあ、バーボンを。」
それを見て、映見も飲み干した。「私はブラッディ・マリーを。」
「イケルねぇ(笑)」
「大森さん、その光らないもの、外してくれません?(笑)気になって仕方ないんですよ(笑)」
映見の言葉に躊躇なく、左手から指輪を外した。
「え!あ、いや…私は冗談で…。」
「いや、こんなの…意味無いよ…。」
そう言って少し笑った大森の顔が寂しそうだった。

最初のコメントを投稿しよう!