奇跡

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「本当は・・・今日、こんな仕事の格好でくる筈じゃなかったんです。」 大森の言葉から逃げようと話を変えた。 「今日の服装は、仕事が出来るキャリアウーマンみたいだよ(笑)こういう言い方は妥当じゃないかもしれないけど、近寄りがたい・・・そんな感じかな?(笑)」 「そんな風に見えます?格好だけですね(笑)私は仕事出来ませんから(笑)」 「仕事出来ない人を休日出勤させないでしょ?(笑)」 その言葉に黙った映見を見て、話を変えた。 「あのSNSに載せたカップル?の写真なんだけど、あれは上手く撮れてるよ。彼氏が彼女に気遣っている様が上手く表されてる。一瞬の表情を上手く捉えたよね。」 「あれは・・・うん。自分でもよく撮れたと思ってるんです。見てて、羨ましいぐらいに、彼が彼女を想ってる・・・そんな感じでした。」 「大内さんは?」 「え!?私?」 「そう、想ってくれてる相手居るんでしょ?」 映見はグラスの縁を撫でて少し笑った。 「あ…別れましたよ。つい、先日。」 真っ直ぐだった視線を映見に向け、慌てた大森。 「ゴメン…知らなかったから…。」 「そりゃ知ってたら、ビックリですよ(笑)エスパーか!?って思います(笑)」 店の扉が開いた。常連客のようだ。若い男性が二人と反対側のカウンターに案内したようだ。 「私…思ったんですけど…。」 「何?どうしたの?」 「この場所って、あのバーテンさん以外、見られない…他の誰からも見られない場所なんじゃ…。」 「まさか(笑)」そう言って大森が確認すると確かに声はするのだが、声の主が見れなかった。 挙動不審な二人に気付いた男性が近寄る。 「ご注文ですか?」 慌てた大森が一気に飲み干した。「じゃあ、バーボンを。」 それを見て、映見も飲み干した。「私はブラッディ・マリーを。」 「イケルねぇ(笑)」 「大森さん、その光らないもの、外してくれません?(笑)気になって仕方ないんですよ(笑)」 映見の言葉に躊躇なく、左手から指輪を外した。 「え!あ、いや…私は冗談で…。」 「いや、こんなの…意味無いよ…。」 そう言って少し笑った大森の顔が寂しそうだった。

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