起【欠点だらけの少年】

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それから三時間目、四時間目、昼休み、五時間目と、一気に流れるように時間は過ぎて行く。 そんな流れるような時間の中でも、僕のクラスの皆は抜かりなく僕へのイジメの手を緩めず、徹底的にやらかした。 その結果―――午後のホームルームの時には、何度か水洗いをして汚れこそ拭ってはいるが、それでも虐めによって受けた事による痕跡が制服に付着していた。 いつものように一人、特に表情を崩す事もなく、誰とも挨拶を交わさず教室をあとにして、いつものように靴の中に詰められた砂だのなんだのを取り除いて穿き替え、校門を抜ける。 何事もなく、何事にも関わらず、居ても居なくても同じ家へ向けて僕は足を進める。 「クロー! ちょっと待ってよー!」 ―――後ろから僕を呼ぶ声に、進めていた足を一度止める。でも、また歩き出す。 「ちょ、ちょっと、待ちなさいって、クロ!」 それでもなお呼び掛け、僕の前へと先回りする一人の少女の姿が。無理して走って、先回りなんてするから。無駄に体力を使って、無駄に肩で呼吸をする羽目になっていた。 肩で呼吸をして、疲れを見せていた長くて綺麗な黒髪の女の子の後頭部を、黙って見る事しか出来なかった僕は、ぶっきら棒に訊ねた。
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