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―――だけど、居るんだよね。
ここに、たった一人だけ。
その、たった一人の人間は、今まさに自分の通う高校の、体育館裏に居た。
その不幸の塊としか言いようが無い、救いようのない人間は、明らかに目つきも服装も、態度も悪そうに見える不良的な少年二人に追い込まれていた。
「お前の湿気た面を見てると、腹が立つんだよ!!」
鈍い暴力の音が、追い込まれた人間の顔に響く。抵抗する間もなく殴られ倒れたその人間は、無様にも汚い土の上へと転がり落ちる。
一撃が強かったのか、それとも殴られた人間が弱かったのか。
いずれにせよ、その一撃によって唾液混じりの血を吐き出した。幸いにも歯は折れていなかったようであったが、思い切り口の中を切ってしまったようだ。
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