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【影】
シアノがシュレイドに仕官した話しは、数日で国内に流れ人々の噂になった。
「聞いたか、あのシアノが【影】を統率するんだってよ」
「ほんとかよ、いくら天才でもな~今度は何日もつかね」
もちろん、この噂は当の本人の耳にもすぐ届いており、顔では謙遜しながらも心の中では別の思いを抱いていた。
(ふん、なんとでも噂すればいいさ。俺はアーウェンのために出世して、この国を動かせるほどの男になって、いずれは王にでもなってやるさ)
そして、そんな噂が街に溢れてから更に数日が経ち
ついにシアノが任された師団の面々と対面する日がやってきたのである。
城へ向かう道々でシアノを見た民達は、威風堂々と正装している彼を見て
「素晴らしい剣士が味方になったものだ」
「あれがシアノ様か、噂通り立派な御仁じゃのぉ」
などと口々に、その風格を誉めた。
シアノが城の前まで来ると待ってましたとばかりに門兵が
「シアノ殿、お待ちしておりました。王からお話しは伺っております。
どうぞこちらへ「影」のメンバーもすでに集合してお待ちでございます。」
とシアノを城内へ案内した。
比較的大きな広間に通されたシアノは少し高くなっている場所に立ち、まずは就任の挨拶を行おうと思い軽い笑みを浮かべて話し出した。
「やぁ皆、私が今日から・・・」「おい、あんたが天才と呼ばれている剣士か?」
挨拶の途中で口を挟まれ、あからさまにシアノは不快な表情になった。
「まぁ勝手に皆が噂しているだけだがな」
「どれ俺が試してやるよ」
そういうが早いか、口を挟んだ兵士は部屋に飾ってある木製の剣で斬りかかってきたのであった。
しかし、シアノは相手の太刀筋を冷静に見切り、その男の腹に重い蹴りを食らわせたのであった。
「うぐぅ・・・」 バタッ
「まだ誰か私と戦いたいと言う馬鹿は、いるのか?」
並んでいるメンバーを睨みつけるように見まわすシアノ
その姿に前列の屈強な男達も臆したようであった。
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