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敗北
とその時
「じゃあ、あたいと勝負してよ」
皆がいる部屋のちょうど真ん中辺りから女性の声がしたので、シアノは声のするほうにゆっくり目線を向けた。
すると、なんとも華奢な女性が群れを掻き分けて出てきたのである。
よく見るとまだ大人の女というより、可愛らしい感じの女だ。
この場には不釣合いな女が自分に挑戦してきたのである。
「ふん、止めておけ女だからとて加減はできんぞ」
脅かしてやろうとシアノは、わざと少しドスの聞いた声を出した、
この言葉で黙って引き下がるものだと読んだからである。
しかし意に反して集った10数名からクスクスと笑い声がした。
(馬鹿にしやがって)
シアノは自分が怒りで顔が赤くなっているのが分かった。
「え~手加減なんてしないでよね、女相手だったとか言い訳されるのやだし
こう見えても、あたいこの部隊じゃ上から3番目くらいには入るんだよ?」
「そうか、では仕方ない本気で行くからな」
(こんな華奢な女がNo.3だと?鍛えがいのありそうな部隊だな)
「ほらよ、天才」
そばに居た男からシアノにも木製の剣が渡された。
(こいつを倒せば、少しは大人しくなるか。まぁ痛い目を見てもらおう)
怒りを静めながらシアノは剣を構えた。
(この生意気な女をどうやって痛めつけてやろうか)
シアノは、そんなことだけを考えていたのである。
だが、シアノのこの軽い気持ちは初太刀で砕かれることになる。
先に仕掛けてきたのは女剣士のほうだった。
斬りかかられたシアノは剣で攻撃を流そうと防御した・・・
つもりであったが、その女剣士の太刀筋はスルリと生きている蛇のように剣を抜けてシアノの身体に到達して痣をつけた。
攻撃力は弱い、というより本気で当てていないような攻撃であった。
数刻後、ゼーゼーと肩で息をするシアノの身体には傷こそ軽いがたくさんの痣が出来たのであった。
「どうしたの、もう終わり?もっと行くわよ~」
女剣士は呼吸も乱さずに次の攻撃の態勢を取った、
悔しいがすでにシアノの身体は言うことを聞きそうになく
心も折れてしまっているのである。
(だめだ、この俺が手も足も出ない・・・)
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