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それを無事に入手した後、反撃しようと直ぐに短刀を向けながら振り返った時だ。
「!!」
どうしてか体が動かなくなった。
何かに押さえつけられるように、力を抜くことも力を入れる事も出来ない。
ただ、目の前に翳した短刀に見慣れたある痕を見つけてしまった。
血の痕だ……。
近づいてくる男。
振り下ろされる包丁。
それは動けない私の短刀へと振り下ろされ、あっけなく目の前で短刀は折れた。
そして……。
ははっ、マジが……。
こんな田舎の、しかも不祥事起こした元同僚に首を切られる事になるなんてな。
しかも多分呪い的な物を受けて。
自分の首から出た鮮血が見える。
そのまま体は後ろへと倒れていき、やがて薄汚れた駅の天井が目の前に広がった。
呪いのせいなのか痛みが無い。
耳も機能しなくなったのか何も聞こえず、私を切った男が何処に行ったのかも分からない。
何だこれ、結構あっさり。
死ね時はもっと苦しんだり嘆いたりすると思っていたのにも関わらず、特に何も感じていない。
思うのは、不祥事起こした元同僚がまた誰かを殺すんじゃないかって事。
死ぬ時ぐらい何かの役に立ちたかったけれど、どうやらそれは無理らしい……。
明らかに、致命傷。
でも人生の最後なんてこんなもんか。
意識が消えていく。
目の前が霞んで行く。
最後に懐かしい顔を見た気がした。
なぁ、ごめん……。
――――……。
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