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春の温かい昼間だった。
ヨーゼフは慌てて口からミッキーを放し、
「大丈夫かい?」
腰を抜かして動けなくなったミッキーに訊ねた。
ミッキーは目を白くして言葉を無くしている。
ヨーゼフは怪我を治す時の様に優しくミッキーを舐めた。
「―――っ!」
ミッキーは声にならない悲鳴を上げた。
『僕は食べられてしまう』
ミッキーはお父さんに『外に行くな』と言われていたのを思い出していた。
ヨーゼフの犬臭いネットリとした息がますますミッキーを怖がらせた。
「た、助けて下さい。」
ミッキーはかすれる声でヨーゼフに命乞いをした。
ヨーゼフには意味が分からない。
ミッキーがヨーゼフを怖がっているなんて予想にもしていなかったからだ。
「助ける?私は何をすれば良いんだい?」
ヨーゼフはできる限り優しい声でミッキーに訊ねた。
ミッキーはヨーゼフの地を這う様な低い声と、吹き飛ばされそうな程の強い鼻息で涙を流す事すらできずにいた。
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