37人が本棚に入れています
本棚に追加
「た、助けて下さい。逃がして下さい。」
ミッキーは恐怖のあまりヨーゼフの目から視線を外す事ができなかった。
ヨーゼフはそんなミッキーを不思議に思いながら
「ここは私の縄張りだから私も早く出ていって欲しい位だ。」
と正直な感想を洩らした。
そしてイタズラっ子の様な笑顔をミッキーに向けた。
『でっかい歯……』
ミッキーはますます恐怖におののいた。
ヨーゼフは怖がっているだけのミッキーから顔を背けて小さくため息をついた。
『ネズミは遊んでくれない』
ヨーゼフは朝夕の散歩以外は鎖に繋がれ何もする事がなかった為、ミッキーが暇潰しに……できれば遊び相手になって欲しいと思っていた。
しかし、腰を抜かしたまま『助けて』としか言わないミッキーはヨーゼフにとって何の興味もない存在だった。
『こんな事になるなら捕まえなければ良かった』
ヨーゼフは恨めしい目付きでミッキーを見つめた。
ミッキーを捕まえた時が一番楽しかった。
捕まえられるかどうかのスリルがある分楽しかったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!