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父さんは滅多に姿を見せないが、母さんはいつも巣穴に籠って大きなお腹で唸っている。
母さんは僕たちを生んですぐにまた身籠ったんだ。
僕たちは５匹で一緒に生まれてきたけど、１匹は生まれてすぐに死んでしまった。
理由は聞いてない。
僕より前に生まれた兄さんは『母さんが押し潰した』って言ってたけど、僕には信じられない。
あんなに子供が好きな母さんが、子供を押し潰すわけないんだ。
父さんに話したら悲しそうにヒゲをピクッと動かして『母さんにはその話をするなよ』と言っていた。
きっと悲しい思い出が甦(よみがえ)るからなんだろう。
父さんは母さんを愛していたし、母さんも父さんを愛している。
そんな２匹の間に生まれた僕は幸せ者なんだ。
たとえ、自分の名前を自分でつけたんだとしても。
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