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血が飛ぶ。息が詰まる。四肢が動かない。血を吐いた。
何時からか、おれの目的は変わっていた。何時からかは分からない。
だが今なら分かる。おれの、おれ達の本来の目的が。
目線の先にはブルーがいるのに。
「ブルー!」
叫んでも、振り返ってはくれない。
何度も叫ぶ。声が潰れても、ずっと叫ぶ。怒号に似た叫びは、大切だからこその叫び。
おれの目的、おれ達の本来の目的が、身体を引き摺られ、崩壊するこの城の中、距離が離れていく。
駄目だ、離してくれ。
ステンドグラスが割れて、床に落ちる。左右の頭上の青い旗が揺れて床に落下し、崩壊音と混ざる。
「ブルー! おれは、おれは!」
ブルーは振り向かない。落下する瓦礫の音が耳元から遠ざかり、何故だか視野からは赤い絨毯に散乱する白色の破片も、アーチを描いていた柱も、消え。
世界から剥離したおれとブルー。
ブルーは振り返らない。
「ブルー! 忘れるな! おれは不謹慎だ、どんなに足掻こうと不謹慎だった。だが変わってやる、変えてやる、捩れてやる、捻ってやる、曲げてやる、傾けてやる!」
茶色い髪が揺れ、ブルーの白い瞳と交差する。
その目に今はとんと慣れてしまっていた。忌々しい目でありながら、惚れさえしているのだ。
何故ならばおれは大好きだからだ。一人の女子を好きになったからだ。
何が悪い。どれが悪い。どちらが悪い。
野暮だ。どうでも良い。おれは身体を引き摺るアリカとレッイレの腕を振りほどき、身体を引き摺るように立ち上がらせた。
血へどを床にぶちまけ、落下する瓦礫を眼前に入れ、奥で佇む二人を見て、憎しみや、悲しみや、助けたい気持ちや困惑や、切なさややるせなさを言葉に乗せる。
「大っ、だいだいだい、だいだい、大ッッッッ嫌いだぁぁぁぁぁぁ!!」
ブルーは軽く笑い、唇が開く。
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