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この頃、眠たい少女は実際そんな些事なんぞどうでも良かったのだ。赤紫のローブを羽織った女性が舞台の中心に立とうとも、それが今後の教室や行事の案内であれ、とにかく眠たいのであり、また転た寝を始めた。
「いまから皆さん一年生には各自の教室に向かって頂きます。そこで――学園の説明を――。そして――」
部分的に記憶に刻まれていて、今後に差し支えがないのが、少女には何時もだった。
これが少女が改善しない理由でもある。理解できていて、あんまり困らない、なら良いのだ。善くも悪くもそれはそうだ。ただ、失礼である。紛れもなく。
「おい、おーい。……っかしいな、寝てるのか? いや、えー……おーい、早く移動しようぜ?」
真横から聞こえて、重たい瞼を持ち上げた。左をみると金色の髪は荒く、ボサボサと逆立ちなどしていて、大雑把な性格が特徴的な青年の顔が目にはいる。
寝惚けているのか、顔が曇り、だれだかいまいち、記憶にない。
瞬きを繰り返し、眼球にはりついた眠気を拭い落とすと視界がクリアになって行く。
そして、感情豊かに起きたことに安堵して表情を弛めた青年の顔。だれだか、理解した。
「レク、何」
短絡的に口にされ、身 を零細に引いたレクは答える。
「今から移動するんだよ、つーか、もうほぼ移動してるんだが……ま、高校生になっても同じクラスになれて良かったよ」
呆れ半分、なにかしら半分な表情をそらし、椅子から立ち上がった。つられて立ち上がり、見渡すとたしかに、ほとんどいなかった。
知り合いはおらず、情深く待っていてくれたのはレク・ホーランだけだ。
「うん。なんだろ。ありがとう、レク。情深いのはレクだけだよ」
「そりゃどーも。んで、学年は当たり前に一年生である俺とお前は、極まってどうでもいい三クラスだ。良かったな、中等と同じじゃねえか」
顔が引きつった。中等と同じ。それどころではない。小等の一年生からいまに至るまで三クラスに付きまとわれているのだ。
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