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間違いはない、奴だ。
レクは多少集まる視線を無視し、椅子に座るアリカ・リックローの華奢な背をみて、息を吹く。
今年の三クラスは色濃い記憶を上書きしようとしているのだ。嫌だ嫌だ、と思考を直ぐに止める。
流れた自己紹介は、また面倒なものに直面する。
「れっ、れぐ。ちゃ、ちが。うぬぬ……、ぼくはレッイレ・サヨウ。上等中兵です。よろしくおねがいします」
奴だ。第二の奴だ。女子でありながら、男子の服装。緊張に過度に弱く、ケアレスミスなんて毎度の事。
黒いショートヘアーは綺麗に切り揃えられ、前髪はバッサリと落とされている。垂れ目の黒目は潤い。小動物を思わせた。
低いその身長は、145程度であろう。身長に触れては、いけない。彼女、レッイレ・サヨウ、または愛唱のレイレのコンプレックスなのである。ふれぬ神に祟りなんとやら。
腰には皮のベルトをまき、左右にはホルスターがあって銃が仕舞われている。
制服はどうせ間違えたのだろう、一日目から清々しいほどのミスだ。
ほかに、奴といえる奴は、おらず、自己紹介は緩やかに進行し、さも当然ながら最後になった。
自己紹介しないといけないこの転た寝少女は机に顔を伏せ、微動だにしない。
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