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「ねぇ、私は貴方に会えてよかったよ。」
――ああ、俺も……君に会えてよかったよ。
「あはは、何で……、何で人間ってこんなに短命なのかな……。もっと一緒に色々なことしたかったのになぁ……。」
――泣くな、ーー。俺はもう満足だ。ここまで悲しんでくれる親友に出会えた。それでもう十分だ。
「……嬉しいこといってくれるね、親友。」
――ああ、心残りと言えば……。そうだな、親友の域から進むことができなかったことか。
「な、何言ってるのさ!」
――ふっ、冗談だ……。ぐっ、ゲホッゲホッ。
「し、親友!?」
――ふぅ、大丈夫。噎せただけだ。……、さて、もうそろそろのようだ。
「……。」
――ここでお別れだ、親友。
「ぐすっ……じゃあね、親友。いい夢を」
――ああ、さらばだ、親友。
†
「んぁ……?ああ、朝か……。」
東側のカーテンの隙間から、日光が直接まぶたを照らす。正直、目を瞑っている今でもとても眩しい。二度寝でもしたい気分だが、この日差しでは薄手の布団を被ったとしても、暗闇を作る効果は薄いだろう。
「しゃあない、起きるか……。」
起きる事に多少の不満はある。今日は日曜日で学校はない。友人と遊ぶ約束もしているが、それは昼過ぎからだ。それに、今日見た夢も気になる。
本来、夢は起きてすぐ、もしくは起きたあと少し経つと、その内容をボンヤリとしか思い出せなくなる……らしい。これは、脳の記憶を司る部分の仕組みがどうたらだだとどっかのテレビで言っていた。詳しいところは知らない。
だが、今日見た夢はどうもそう言ったものではなさそうだ。昔の木造建築の様な家の一室らしい場所で誰かと誰かが会話している夢。しかも、その風景を俯瞰で眺めるのではなく、自らが体験しているような視点で流れるものだ。もちろん、俺の家は、昔の木造建築ではないし、俺自身はそんな経験をしたことがない。
「前世の記憶……? はは、んなバカな……。」
まあ、考えていても仕方ない。時計も9時を指している。もういい時間でもあるし、起きるとしよう。
「確か、11時に駅前集合だったな。」
予定を誰に話すでもなく呟く。久しぶりの友人たちとの外出だ。楽しまなければ損と言うやつだ。
「さて、今日も元気に行きますかねっと」
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